アフリカの森奥に潜む恐怖の感染症エボラ The Hot Zone

ノンフィクション
CDCより

The Hot Zone、Kindle版

Richard Preston

ページ数:450

Kindle位置No.:4530

出版年:2012年

邦訳:ホット・ゾーン エボラ・ウイルス征圧に命をかけた人々(ハヤカワ文庫NF) リチャード・プレストン 著 高見浩 翻訳

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はじめに

現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界で猛威を振るっている。この突然世界を襲った感染症により世界で感染者数は580万人、死亡者は36万人を越えている。ヨーロッパやアメリカなどは都市閉鎖や外出禁止を行い、世界経済に与えた影響ははかりしれない。

ウイルス自体は目に見ることができない。我々は理解できないもの、知らないもについては潜在的に恐怖を覚える。感染症についての知識を深めることが今こと求められている

本から得られる知識

エボラ感染症はどのように見つかったのか

感染症がどうやって動物から人間、人間の間で広がっていくか

エボラ感染症のはどのような症状なのか、治療や予防はどうなのか

エボラウイルスの特徴

エボラ感染症について学ぶことでインフルエンザやコロナウイルスなどの身近な感染症について考える材料となる知識を増やすことができる

著者について

雑誌ニューヨーカーのベストセラー作家。感染症やバイオテロなどのフィクション、ノンフィクションで知られる。マサチューセッツ州に生まれプリンストン大学卒業。非医師で初のアメリカ疾病予防管理センター(CDC)予防医学賞大賞受賞。

著書として他にPanic in Level4、The Cobra Event、The Demon in the Freezer、Crisis in the Red Zoneがある。

本のあらまし

本書は著者プレンストンの徹底した研究調査やインタビューに基づく、エボラ感染症に関わる者達の物語である。物語にでてくる人物は多く混乱することもあるかと思うが、巻末に主要人物の簡単な説明がある。

最初の被害者、Charles Monetの暮らしぶりから始まり、森の奥に潜むどのようにエボラに感染したのか、また治療されるにあたり周囲の人にどのように広がっていったところから語られる。

そして、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)、米国陸軍感染研究所(USAMRIID)での獣医や研究者達がどのようにエボラ検体を扱っているか、ワシントン郊外で起きた業者に扱われる猿の大量感染にどう対処していったかがまるで小説を読んでいるように語られていく。

印象に残った点

著者は臨床医ではないが、その説明は正確で医学知識がない人でもエボラウイルスが人体にどのような影響を与えるのか、エボラ感染した人はどのような症状をだすのかを理解することができる。また、実際現場に居合わせたような疑似体験をすることができ、エボラウイルスについて単に調べただけよりも深い理解が得られる。

医学の専門用語もかかれているのだが、どれも分かりやすく説明されている。以下は本文からの一部抜粋で、ここだけみると分かりにくいもしれないが、本来は前後の文脈があるので読んでいるときには誰でもここに書かれていることは問題なくわかるようになっているだろう。depersonalizationは離人症という意味で、南山堂医学大辞典第12版を引いてみると人格感喪失、有機感喪失という意味の分からない説明がでている。自分ももし同様に説明を求められてもここまで上手く記述はできないだろう。なお、巻末に専門用語もまとめが本書にはあるので物語を全部読み終わった後にどのくらい理解できるようになっているかチャレンジすることもできる。

He doesn’t seem to be fully aware of pain any longer because the blood clots lodged in his brain are cutting off blood flow. His personality is being wiped away by brain damage. This is called depersonalization, in which the liveliness and details of character seem to vanish.

The Hot Zone (p.19). Knopf Doubleday Publishing Group. Kindle 版.

この本で最も印象に残るのは致死率が異常に高いエボラウイルスに接したときに人々の恐怖だ。ザイールエボラウイルスは10人中9人を殺し、助かったとしても重篤な後遺症の可能性がある。ウイルスが人体を破壊する様はすさまじく、現実はホラー顔負けの惨劇を作り出す。生き残ったとしても感染する前と全く別人になってしまったり、半身が動かなくなることがおこりうるのだ。獣医のNancyは家で手に切り傷をつくってしまう。エボラのような危険な感染症を扱う研究者は全身を保護服でつつむので傷のところは覆われているのだが、それでも十分ではないのだ。詳しくは物語を実際によんでいただきたい。

A Level 4 hot agent is a lethal virus for which there is no vaccine and no cure.

The Hot Zone (p.62). Knopf Doubleday Publishing Group. Kindle 版.

後半はワシントン郊外でおきたモンキーハウスでの集団感染についての物語となる。前半のエボラウイルス感染症の記述では臨床的な内容が主だったが、エボラウイルスを扱う研究施設での対応、研究者の普段の様子が描かれる。自分が実際に研究者と同じ立場だったら、彼らに降りかかる不幸は避けようがなくまた不安にさいなまれただろう。また、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)に対応は一歩間違えればアウトブレイクにつながっただけに非常に示唆に富んだ内容だ。

まとめ

エボラ感染症について正確でかつ簡潔で、しかもホラー小説をよんでいるような感覚で感染症についての理解が得られる本書を読むことは、感染症についての知識が求められる現在意義があることだ。

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