[洋書書評]罠にはめられた家族が支払った代償 Burnt offerings by Robert Marasco

price ホラー

本を選んだ動機

本を選ぶのには最近ではGoodreadsAmazon.comのおすすめを見ることが多い。シャーリージャクソンのHaunting Hill House(邦訳:丘の屋敷)やRichard MathesonのHell House(地獄の家)から関連したおすすめとなっていたのでチョイス。評価も星3.8なのではずれもまずないと見込んでのこと。1973年の作品で古いが、スマートホンが普及した現代ではこの時代の雰囲気はだせないであろう。

タイトルについて

題名はBurnt offeringsで、辞書での意味は燔祭(はんさい)、すなわち祭壇で焼いて神にそなえる生け贄のことらしい。聖書で旧約聖書でアブラハムがイサクを神に捧げようとするときのことをイサクの燔祭という。このときは山羊が代わりに燔祭となった。

あらすじ

都会暮らしの夫ベン(Ben)はニューヨークでの暮らしについて子供の養育にはあまりいい環境ではないと思い始めていた。妻のマリアン(Marian)はプライバシーのないアパート暮らしに嫌気がさしており、広告でみつけた激安の借家で夏の休暇を一家で過ごすことを提案する。しかし、その借家では思いもかけない出来事が待ち受けていた。

主な登場人物

ロルフ一家(Rofles)

  • ベン(Ben):夫
  • マリアン(Marian):妻
  • ディビット(David):息子
  • エリザベスおばさん(Aunt Elizabeth):74歳だがしっかり自立。ベンの父親の兄姉。

ロズ・アラディス(Roz Allardyce)とBrother:別荘の貸し手

読みやすさ:易しめ

英文の小説を読む場合、設定とか登場人物をまず覚えなければいけないけれど、英文で読むもんだからなかなか頭にはいらず苦労することも多い。しかし近現代のホラー小説は登場人物の関係や背景が分かりやすいものが多い。

この作品も登場人物は少なく、プロットも極めて単純でその点児童書やヤングアダルトの洋書と比べても読みやすい。英語も難しいものは使われていない。オーディブルで7時間ほどなので音読速度を180語/分と仮定するとおおよそ80,000語。

物語からの私的教訓:物の価値とその代償

この作品では、伏線がちゃんとはってあり出来事に不自然性がないところがよい。もちろんホラー小説で超常現象が起きるのだけれど、それ以外のところでちゃんと辻褄あわせがしてあるのだ。

ロルフ一家が家を借りる際に一ヶ月間90ドルで最初からベンが怪しいとマリアンに主張するが、マリアンは全く聞き入れない。読者としては、ホラーなのだから恐ろしいことが起きるし、激安の借家なんて不吉な予感しかしない。でも、ベンはマリアンに家を借りないなんてありえないと言われ、再考して最終的には二人は納得して家を借りたのだ。

“ ‘Very reasonable,’ as I recall,” Marian said. “And so it is, for the right people.”

Marasco, Robert. Burnt Offerings (Valancourt 20th Century Classics) . Valancourt Books. Kindle 版.
Altered.

世の中、値段というのには原則的にちゃんと需要と供給が釣り合ってついているものだ。そしてさらに言うと値段はそのものの価値を直接示すものではない。

例えば、よく引き合いにだされるのが新築マンション。購入することを否定する気は毛頭ないけれど、あくまで一例として読んで欲しい。マンションを購入してすぐに売ったとすると元の値段では売れない。広告費とかモデルルーム費用とか含まれていると考えられ、中古として売ったらまず新品と同じ値段では売れない。同じ現象が電化製品、家具、車、いずれも概ね当てはまるだろう。

また、100円ショップの商品、不要だからたくさん買い込んで結局使わないということはないだろうか。値段は安くても使わず捨ててしまうなら浪費と同じことになってします。また、高給腕時計は透視として買う人もいるわけで、値段は高くても最終的に得をするのなら100円の浪費と比べものにならない価値を生む。

ロルフ一家は一夏の思い出と思って借りた家で、それとはとても見合わない代償を支払うこととなる。なぜ借家の値段が安いのかを知ろうともせずに、また貸し手の態度に怪しいところがあるのに自分で自分を納得させてしまう。

この作品では、このように伏線がはってあり、最初は伏線とはあまり思わないのだが読むについてその記述の意味が分かってきて不気味かつ恐ろしいことにつながっていく。超常ものがご都合主義でいやと自分も思うことはあるけれどこの作品はそれがなく最後まで夢中になってよんでしまった。

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